2025.08.15

CRMにおけるカスタマージャーニーとは?

戦略プランナー

北村 健太

戦略プランナー 北村 健太

関係性の変化を設計する“状態遷移の構造”の描き方

01|カスタマージャーニーとは何か?──「状態遷移を支える構造」としての再定義

一般的に、カスタマージャーニーは「顧客が商品やサービスと出会い、購入・継続利用に至るまでのプロセス」として描かれます。多くの場合、それは「認知→興味→比較→購入→利用」といった線形モデルです。

しかし、mtc.のCRM思想におけるジャーニーは、そのような購買行動の段階ではありません。

mtc.では、カスタマージャーニーを「顧客の状態(態度)の変化を支える構造設計」と定義しています。

たとえば、

  • 「知ってはいるが、まだ自分ごとになっていない」
  • 「気になっているけれど、試す理由が見つからない」
  • 「使ってはいるが、本当に続けるかは迷っている」

といった“心の状態”ごとに、関係性を分解し、設計する必要があるのです。

02|なぜCRMにおいて“態度変容の地図”が必要なのか

CRM施策はしばしば「チャネル最適化」や「セグメント配信の精度」ばかりに意識が向きがちです。しかし、それだけでは顧客との関係性は深まりません。

なぜなら、顧客が前に進まないのは“情報が足りないから”ではなく、“納得や確信が未熟だから”です。

顧客の状態とは、気温のように“グラデーション”で変化していくもの。その変化に合わせた設計を行わなければ、CRM施策は行き届かず、成果にもつながりません。

03|ジャーニー設計の5ステップ(mtc.式)

1|関係性フェーズの分解(状態遷移を洗い出す)

  • 認知・検討・購入といった購買段階ではなく、「信じているか」「不安を感じているか」「理由を持っているか」といった“態度レベル”のフェーズ分解

2|各状態における“停滞理由”の分析

  • 顧客はなぜ次に進まないのか?
  • 例:「初回購入したが、継続理由が見つからない」「比較しているが、違いがわからない」など

3|チャネル別“役割”の再定義

  • LINE=温度を上げる/メルマガ=納得を支える/同梱物=期待に応える など
  • 接点ごとに「どの状態を動かすか」を定義することが重要

4|態度変容KPIの設定

  • 「開封率」「CVR」ではなく、「商品理解率」「納得層の割合」「試用継続率」など
  • 顧客の“心の位置”に基づく変化を測る指標を設計する

5|状態起点で配信シナリオを組む(タイミングとトリガー)

  • 例:「比較層に対して、商品比較のストーリーを届ける」「迷っている層に“後押しの理由”を届ける」

04|カスタマージャーニーを制作するプロセスとは?

実際に、状態遷移のジャーニーをどのように描いていくのか。mtc.が現場で用いている、シンプルかつ実践的なプロセスは以下の通りです。

STEP 1|顧客とブランドの関係性を「動詞」で捉える

  • 「知る」「気になる」「比べる」「納得する」「買ってみる」「続けて使う」など、顧客が起こす行動・心理変化を動詞で洗い出します。

STEP 2|その動詞ごとの“阻害要因”を可視化する

  • なぜ「比べている」で止まってしまうのか?
  • なぜ「知っている」けど「気にならない」のか?
  • 背景にある不安・知識不足・決め手不足を列挙

STEP 3|阻害要因に対して「状態を変える接点」をマッピング

  • メール、LINE、同梱、WEB接客、CSなど、変化を促せる接点を洗い出します
  • 接点の「役割」を定義(例:メール=納得支援、LINE=温度引き上げ)

STEP 4|ジャーニーマップを“状態遷移 × 接点”の行列で描く

  • 横軸に「状態の変化」、縦軸に「接点の役割とトリガー」
  • KPIやクリエイティブの粒度を入れていく

STEP 5|“動かせていない状態”を明確化し、優先順位を定める

  • どのフェーズに“滞留”している人が多いか?
  • その状態の人を動かすには、どの接点が未整備か?

このように、ジャーニー制作は「情報を並べること」ではなく、「どの状態を、どの接点で、どう動かすか」を設計していくプロセスです。

05|よくある失敗とその構造

失敗①:「F1→F2」などの購買単位で分けてしまう

→ 顧客の“心の状態”は購買回数では定義できない。継続していても迷っている人もいれば、初回でも信じている人もいる。

失敗②:接点の役割があいまいで、情報提供に終始する

→ 「何を届けるか」ばかりにフォーカスし、「なぜ届けるか(どの状態を動かすか)」が抜けている

失敗③:KPIがチャネル都合で設計されている

→ LINEの開封率やメルマガのCTRなど、個別の成果は見えても“全体の関係性進行”が見えない

06|事例で読み解く:関係性を設計したジャーニーが成果に変わった例

● F2転換率が2倍超に改善したD2Cブランド(化粧品EC)

  • 顧客の「効果が実感できなければ次はない」という状態を定義
  • 「実感の兆し」を届けるCRMメール設計に刷新
  • 不安を抱えていた状態を「信じてみる」に変化させた結果、F2転換率2倍超に

事例を見る

● 比較層向けCVR改善施策(ECサイト×KARTE)

  • 商品詳細ページ閲覧後の“決め手が見つからない”状態に注目
  • 接客ツールと連動したメールで「他の人の選定理由」を提示
  • “比較中”から“納得して選ぶ”への変化を促進

事例を見る

07|まとめ:CRMとは、状態を分けて、変化を促す構造を描く営みである

  • カスタマージャーニーは、接点の流れではなく、「関係性を深めるための構造設計図」
  • 顧客の“心の状態”を正しく理解し、その状態ごとに設計することが、CRMの要諦
  • 状態を定義し、接点の役割を分け、チーム全体で“状態を動かすCRM”を共通認識にする

\ 顧客の“心の状態”に合わせたCRM、できていますか? /

mtc.では「CRM構造診断(カスタマージャーニー編)」を無料で提供中。

  • 顧客の態度変容に応じた設計ができているか?
  • 今、もっとも動かすべき“状態”はどこか?
  • 接点が本当に“状態を変える役割”を果たしているか?

無料相談から、CRMの再設計を一緒に始めてみませんか?

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