CRM戦略とは|正しい戦略の立て方と成功事例を解説
CEO
岡崎 徹
CRM戦略とは、顧客に繰り返し商品やサービスを購入してもらえる「仕組み」を作ることです。新規獲得の施策にかかる費用を削減しつつ、売上やLTVを伸ばしたい場合には、CRM戦略が特に重要になります。
本記事では、CRM戦略とはどのようなものなのか、実施するにはどのような手順でおこなえばいいかについて、わかりやすく解説しています。お読みいただくことで、CRM戦略はどのように考え、どのように進めるべきかがわかります。
CRM戦略の成功事例やアイデアも紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
- CRMに取り組んでいるものの、思うような成果が上がらない
- メールやLINE、MAの運用など様々な施策を横断的に取り組んでいるものの、正解が見つけられない
- リピート率向上やF2転換、LTVの向上など課題はあるものの、最適な打ち手が分からない
もしもこれらの課題をお持ちの方がいらっしゃいましたら、プロによるCRMのパフォーマンス診断を実施してみませんか。大手化粧品会社をはじめ創業から約7年に渡り一貫してCRM支援に携わってきた私たちmtc. が、貴社の戦略についてアドバイスをさせていただきます。診断は無料です、お気軽にご相談ください。
CRM戦略とは
CRMの戦略とは、一言でいうと「繰り返し購入・利用してもらえる、再現性のある仕組み」を作ることです。
適切なCRM戦略を考え実行できれば、新規獲得に費用をかけなくとも、既存顧客のリピートによって売上・LTVの向上が期待できます。
なお、そもそもCRMとは「顧客関係管理」を意味する概念です。
一般的に「CRM=ツール」という認識が広がっていますが、本来は顧客との関係を、維持・向上することで顧客満足度を高め、リピート・継続してもらうことを指します。ツールはあくまでもCRMを実行する手段であることを覚えておきましょう。
▼CRMの施策例
- 流入経路ごとに、初回のメール配信のコンテンツ内容を変える
- 顧客の誕生日に合わせて、顧客が喜びそうな自社オリジナルのプレゼントを発送する
CRMの正しい定義については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
CRM戦略を実施するメリット
CRM戦略を考え実施する最大のメリットは、施策(特に広告)にかかるコストを下げられることです。
自社の商品やサービスを繰り返し購入・利用し続けてもらえる仕組みを作れば、例えば新規顧客の獲得にかける費用を削減できます。
そのため「広告費を削減しないと予算が上限に達してしまう」「CPAの高騰に対処しなければいけない」などの課題を抱えている場合は、CRMを取り入れる/見直すことが有効です。
また、より細分化するとCRMには以下のようなメリットもあります。
- 顧客に対し一貫したコミュニケーションが取れる
- データドリブンで戦術を決められる
- 顧客満足度を向上できる
- ロイヤルティを向上できる
結果として繰り返し購入・利用してもらえる、つまり売上やLTVを向上させることができます。
今までCRMを実施してこなかった企業であれば、取り組むことで成果を上げられることがほとんどです。まずはメール一通からでも、実践してみるのがおすすめです。
なお、現時点で広告によって多くの新規顧客を獲得でき、売上や利益が右肩上がりになっている企業であれば、広告の方が費用対効果は高いため、今の段階ではCRMの必要性はそこまで高くありません。
CRM戦略を考え実施する手順
CRM戦略とはどのようなものかについて解説してきましたが、ここから具体的な実施手順について見ていきましょう。
CRM戦略を実施する手順は、以下のとおりです。
- 顧客との関係性をどう定義しているかを確認し、コミュニケーションの軸を決める
- 顧客の分析が十分にできているかを確認する
- KGI、KPIを明確にする
- KPIに対して、まずやるべきことを決める
- 施策を実行し、成功体験を積む
では、手順ごとに詳しく解説していきます。
STEP1.顧客との関係性をどう定義しているかを確認し、コミュニケーションの軸を決める
顧客との関係性の定義とは、例えば「友達のような関係を築く」「主人と執事のような関係」といったように、顧客とどう関わるかを決めることです。
顧客との関係性をどう築きたいのかによって、コミュニケーションの内容が大きく変わるからです。
例えば友達のような関係を意識するのであれば「友達が好きそうな商品を見つけたから教えてあげよう」「友達が欲しがっていたこの商品の在庫が残り少なくなったから教えてあげよう」といったコミュニケーションが生まれやすくなります。
一方で、顧客にとっての執事のように関わるケースを考えてみます。「好みの商品をおすすめしたい」という気持ちは同じでも、この場合は「主人が気付きやすい場所にそっと置いておき、自分自身で気付いたかのように商品を見つけてもらう」といったコミュニケーションの違いが出てくるでしょう。
また、メール作成時の言葉遣いも「友達」と「執事」では変わってくるでしょう。
このような定義ができていないと、メール・LINE・サポートセンターからの返答などすべてにおいて、コミュニケーションがバラバラになってしまいます。顧客との関係性を定義したら全社に統一し、顧客への接し方(トンマナやコミュニケーションの軸)を統一しましょう。
なお、関係性を定義する際には「自社のブランド・サービスがどうあるべきか」を考えることがおすすめです。
STEP2.顧客の分析が十分にできているかを確認する
次に、顧客の分析ができているか、顧客を理解して定性・定量で捉えられているかを確認しましょう。
※このステップは十分なデータが貯まっていることが前提であるため、それができていない企業はまずデータの蓄積からおこなう必要があります。
分析には様々な手法がありますが、その中でも特に、顧客ポートフォリオの作成・分析は必須で行うべきだと考えています。
顧客ポートフォリオは、購入金額や購入頻度などによって顧客を分類したものです。
▼例
- 定期的に購入するが、金額は小さい顧客層
- 不定期の購入だが、一度の金額が大きい顧客層 など
顧客ポートフォリオを作成・分析することで、それぞれの顧客に対してどのようなコミュニケーションを取るべきかが判断しやすくなります。
顧客ポートフォリオを作成するうえで参考にしたいのが、「やずや式CPM(カスタマーポートフォリオマネジメント)」です。以下のように顧客を、購入金額・在籍期間・離脱期間でグルーピングします。
購入金額 | 在籍期間 | 離脱期間 | |
初回客 | ─ | 0日 | 0~240日 |
よちよち客 | ─ | 0~90日 | |
流行客 | 7万円以上 | 90~210日 | |
コツコツ客 | 7万円未満 | 90日以上 | |
優良客 | 7万円以上 | 210日以上 | |
離脱客 | ─ | ─ | 240日以上 |
※参考:書籍「社長が知らない 秘密の仕組み 業種・商品関係なし!絶対に結果が出る「黄金の法則」」
このように分けられたら、それぞれのグループに対して適切なコミュニケーションを検討していきます。また、上記の表では離脱客が「240日以上」とされていますが、その前の何日間が「離脱見込み」となるのかを設定しておくことも重要です。
ただし、上記の形はあくまでも一例です。グループの分け方や各項目の基準は、企業によって異なりますので、自社のサービスに合わせた顧客ポートフォリオを作成しましょう。
そしてもうひとつ、潜在ニーズの把握など顧客を理解するために欠かせないのが、ペルソナの作成です。ペルソナとは、自社が提供するサービスのターゲット像を、以下のように具体的にイメージしたものです。
- ターゲットがどういう考えや悩みをもって生活しているか
- ターゲットが表向きに出す表情と、実際に考えていることの違いはなにか
ターゲットの感情面にフォーカスして考えることがポイントです。
これらは、顧客データや顧客インタビュー・アンケートを通じて得られた実際のデータを参考にすることで、ターゲットの感情や心理状況を想像しやすくなるでしょう。
また、これらの作成・分析とあわせて、「優良顧客」などの言葉を定義し、全社で認識を共有してズレをなくしましょう。
STEP3.KGI、KPIを明確にする
次に、CRM戦略におけるKGIを明確にし、そこからブレイクダウンしてKPIを決めていきます。
CRMを実施して「売上を上げたい」なら売上がKGIに。「LTVを上げたい」ならLTVがKGIになります。KGIを何にするかによって、KPIやそれに紐づく施策も異なります。
例えばKGIを「売上を上げること」とした場合のKPIについて考えてみましょう。売上の構成要素は、訪問(顧客数)・コンバージョン率・単価です。
売上=訪問(顧客数)×コンバージョン率×平均単価 |
そのため、設定すべきKPIはこれらの構成要素をどのように分けていくかで決定します。訪問(顧客数)であれば、「新規UU+既存UU」に分けられ、さらに新規UUはオーガニックやSNS、広告などに分けられます。
平均単価も、新規顧客・既存顧客や流入経路ごとに平均単価が変わるため、ツリーでさらに細分化していくことが可能です。基本的には末端まで分解し、その中でどこをKPIとするのかを決めていくのです。
KPIは複数あっても問題ないので、KPIごとに担当部署が受け持ちましょう。
例えば以下のようなイメージです。
- 訪問(顧客数)を担当する部署
- コンバージョン率を担当する部署
- 単価を担当する部署
それぞれがKPIを達成できれば、売上は必ず上がります。大切なのは、最終的にKGIである売上(もしくはLTV)が上がるように、漏れなくKPIの設計をすることです。
STEP4.KPIに対して、まずやるべきことを決める
次に考えることは「まず、どこから着手すべきか」です。
これからCRMの取り組みに力を入れるのであれば、もっとも伸びているところからはじめるのがおすすめです。
なぜなら、伸びているところに注力することで数字が向上しやすく、CRMの効果を実感しやすいからです。
特に、F2転換(初回購入後にリピート)しているユーザーの流入経路や属性を見定め、それらに類似する新規顧客に施策を講じていくと、成果が出やすいでしょう。顧客ポートフォリオのグループから、「施策を講じれば売上を伸ばせそうな顧客層」を見定めて、そこから施策を検討してみましょう。
反対に、離反顧客への取り組みからはじめると、大きな成果が出ないことがほとんどです。離反対策自体はいつかやらなければならない施策ですが、はじめから取り組むとCRMの効果が見えにくくなってしまいます。
また、優良顧客に対してのコミュニケーションを重要視しているケースも多くありますが、このグループはすでに育っている状態の顧客層です。コミュニケーションを取らずとも購入してくれるケースが多いため、優先的に取り組む必要はありません。
STEP5.施策を実行し、成功体験を積む
どこからCRMを実施していくのかを決めたら、施策を検討して実施していきます。CRMの効果が数字として表れることで、会社としてもより力を入れられるようになるでしょう。
成果を上げやすいところから取り組むことで成功体験を積み、徐々に別のグループの施策にも取り組みます。そうして、最終的には全体の顧客に対してCRMをおこなえるように、進めていきましょう。
CRM戦略を立てる際の注意点
CRM戦略の注意点として、「STEP2.顧客の分析が十分にできているかを確認」でも触れましたが、戦略を立てる前にデータを十分に貯めておく必要があります。データがなければ詳細な分析ができず、顧客の理解が深められないため、効果的な施策を講じられません。
顧客データと購入履歴といったデータだけでも、CRMに取り組むこと自体はできますが、どうしても精度は低く、考えられる施策も減ってしまいます。
アクセスログなどのデータを貯めていない場合は、数か月かけて十分な量を貯めるところからはじめましょう。
CRM戦略の成功事例やアイデア
ここまで、CRM戦略の手順などについて解説してきましたが、より具体的にイメージできるように、弊社が支援をおこなった事例や、施策のアイデアをご紹介します。
1.在庫を知らせるメールで、高い開封率とコンバージョン率を実現
ファッションのECサイトを運営するA社では、お気に入り機能を登録してもらうにはどうすればよいかについて検討していました。
その施策について話し合っている中で、『リアル店舗の店員がよく利用してくれる常連客に「あなたが好きそうな商品が入荷して、残り1点だったので取っておきました」と言われたら嬉しい』という話が出たため、それをメール施策に落とし込めないかを考え、お気に入り機能を活用することになりました。
検討した結果、お気に入りが在庫1個になった時点でメールを配信する「お気に入り在庫1個メール」というアイデアが生まれました。
「お気に入り在庫1個メール」を開始した結果、メールの開封率は80%、開封からのコンバージョン率も30%という成果を上げることに成功しました。在庫が1点しかなく、買えない人が多い中で30%というコンバージョン率を実現できたため、非常に効果が大きい施策であったといえるでしょう。
2.Web接客の導入・パーソナライズ化した施策の実装などをおこない、ECサイト全体のCVRが向上
化粧品会社のB社は、競合に比べてEC化率が低く、ECシフトが遅れているという課題がありました。そのため、抜本的にやり方を変化させ、スピーディーにECの売上を伸ばすことが求められていました。
社内で検討した結果、Web接客ツールの導入が決定しましたが、知見がないことから施策を立てることも運用していくことも難しかったため、弊社にご相談をいただきました。
サイトリニューアルに合わせて、Web接客ツールの導入が決定。仕様策定から実装を含めた導入と、既存チャットボットからの乗り換えを同時に進行しました。チャット機能では、チャットボットから有人チャットへのシームレスな遷移を実現し、顧客のニーズに合わせた細かいカスタマイズを実施しました。
運用フェーズでは、サイト訪問顧客の行動データを基に、パーソナライズ化した施策の実装や、事業売上への貢献のためのキャンペーン施策などの実装を、週に一度ミーティングを重ねながら進行していきました。
さらに、Web接客ツール導入以前にメールのみで実施していた「既存顧客への誕生日クーポン施策」をWeb接客にも実装。メールを見ているユーザーが「しつこい」と感じないかという懸念もありましたが、掲示の条件を細かく設定してしつこさを軽減したことで、結果としてクーポン利用率は10倍改善され、売上の増加に繋がりました。
ここから、Web接客時の細かな掲示条件の設定を各施策で実施していった結果、取り組み開始から1年で、ECサイト全体のCVRが改善。売上の向上が見られ、支援2年目の今期はECサイトでの売上目標として、昨年対比150%を目指した取り組みができるようになりました。
3.顧客の解像度を上げて精度の高いペルソナを設計し、意思決定の判断材料に活用
オフィスビル・商業施設・住宅などの、幅広いソリューションとサービスを提供するC社は、大型商業施設を新しくオープンしたものの、想定よりも来客数が芳しくない状況が続いていました。
そこで、集客施策やイベント企画、また出店テナントの見直しなどをおこなうべく、あらためてターゲットとすべき顧客像を明確化すために、顧客リサーチをおこないました。しかし、漠然とした結果しか得られず、精度の高い顧客理解をいかに実現するかという課題を抱えており、弊社にご相談をいただきました。
まずは、現場となる商業施設で訪問客の実態の観察調査を実施。平日と土日でも客層が異なるため、複数回に渡って現場を訪れてモニタリングをおこないました。
そこから複数パターンに分類した顧客像の仮説を立て、検証のために出店テナントの担当者に対してヒアリング調査を繰り返し実施。仮説の精度を高めていきつつ、さらに実際の来場者に対してもその場でユーザーインタビューをおこない、顧客の解像度をあげていきました。
取り組み前に分類していた複数パターンの顧客像を精査し、最終的に6パターンに分類してペルソナを設計しました。
顧客の解像度が高まったことで、集客施策の企画出しにも役立っており、実際に取り組みを通じて商業施設内で開催するイベント数は増加。また、出店テナントの見直しにも活用するなど、様々な意思決定の判断材料としてペルソナ設計を活用しています。
まとめ
本記事では、CRM戦略について解説してきました。最後にまとめをご覧ください。
▼CRM戦略とは
「繰り返し購入・利用してもらえる、再現性のある仕組み」を作ること
▼CRM戦略を実施するメリット
新規獲得(特に広告)に費用をかけなくても、自社の商品やサービスを繰り返し購入・利用してくれる顧客を増やすことで、施策にかかる費用(特に広告費)が下がり利益が上がる
▼CRM戦略を実施する手順
- 顧客との関係性をどう定義しているかを確認し、コミュニケーションの軸を決める
- 顧客の分析が十分にできているかを確認
- KGI、KPIを明確にする
- KPIに対して、まずやるべきことを決める
- 施策を実行し、さらに展開する
CRM戦略では、分析が不十分であることが往々にしてあります。そのため、これからCRMをはじめたい、成果が出ていないから改善したいという方は、正しい手順で進めていきましょう。
- CRMに取り組んでいるものの、思うような成果が上がらない
- メールやLINE、MAの運用など様々な施策を横断的に取り組んでいるものの、正解が見つけられない
- リピート率向上やF2転換、LTVの向上など課題はあるものの、最適な打ち手が分からない
もしもこれらの課題をお持ちの方がいらっしゃいましたら、プロによるCRMのパフォーマンス診断を実施してみませんか。大手化粧品会社をはじめ創業から約7年に渡り一貫してCRM支援に携わってきた私たちmtc. が、貴社の戦略についてアドバイスをさせていただきます。診断は無料です、お気軽にご相談ください。